6th release

The Hammond Organ Swing & Funky !

Daisuke Kawai Group

  1. Ready'N Able (10:29)
  2. Midnight Mood (7:59)
  3. Frame For The Blues (13:03)
  4. Mercy! (19:52)
  5. Mercy, Mercy, Mercy (5:59)
  6. Friday Night At the Cadillac Club (9:33)
  7. The Good Life (8:41)
  8. Root Down (13:14)

PERSONEL

河合 代介

Dausuke Kawai

Hammond Organ

 1965年生まれ、愛知県豊橋市出身。10歳より独学でハモンドオルガンをマスターすることを志す。89年スタジオミュージシャンとしてデビュー。多数のレコーディング、ライブ・セッションに参加。04年より約10年間、吉田美奈子とハモンドオルガンのデュオで好評を博した。98年よりジャズオルガンプレイヤーとしても活動を開始。日野皓正、渡辺香津美、増尾好秋、クリヤ・マコト他多数と競演。2003 年より Tommy Campbell(ds)と「Organ-Eyes Session Band」を始動。2005年には Blue Note New York に同セットで出演、好評を博す。現在は五輪真弓バンドのバンドマスターとしても活躍中のハモンドオルガン演奏家。

大槻 KALTA 英宣

Otsuki "KALTA" Hidenobu

Drums

 1970年生まれ、東京都新宿区出身、5歳から神奈川県横浜市にて育つ。3歳から電子オルガン、7歳からクラシックピアノ、10歳からドラムを始める。学生時代からプロドラマーとしての活動を開始し、ジャンルを問わず様々なバンドを経験する傍 ら、20歳の時にはドラム・インストラクターとしても活動を始めた。20代中盤以降は、並行して 作編曲家・プロデューサーとしても活動を開始し、ゲームソフトの音楽・効果音制作からサウンドプログラミングなど、各種CMや企業PV等の音楽制作、そして J-POPS へと活動の幅広げ、時には作編曲のみならず作詞までをも手掛けてきた。ドラマーとして制作・参加してきた CD等の作品数はすでに 100タイトルを超えている。

太田 剣

Ken Ota

Alto & Tenor Sax

 1970年生まれ、愛知県の渥美半島出身。中学で サックスを始め、高校ではクラシックを演奏。雲井雅人に師事する。早大に進むと同時にジャズに転向し池田篤に師事。在学中に渡米して Kenny Garrett、Vincent Herring にも師事する。1990年代よりライブ活動を始め、大坂昌彦(g) TOKU(Vo,flh)、小沼ようすけ (g)、Tommy Campbell(ds)、小林陽一 (ds)らのバンドにも参加。2006年、CD「Swingroove(スウィン グルーヴ)」でユニバーサル・ミュージックより メジャーデビュー。Jazz の名門「Verve(ヴァーヴ)」レーベルから CDをリリースしたサックス奏者としては、渡辺貞夫に続いて日本人2人目となる。現在ジャズ界だけでなく多方面で活躍中。

天野 清継

Kiyotsugu Amano

Guitar

 1956年生まれ、東京都出身。3歳よりピアノ 11歳でギターを始める。立教大学ジャズ研に 所属。卒業後に渡辺貞夫バンドに加わり、全国ツ アーに参加。以後プロ活動を開始し、矢沢永吉等と共演。1988年に渡米し、ミュージックスクール・スタジオグルーヴ作編曲科卒業。帰国後の1991年にソロ・デビューアルバム「AZURE」をビクターエンタテインメントから発表。アレックスアクーニャやドン・グルーシン、ゲーリーハービックなども参加。クラシック音楽の楽曲として知られるタイトル曲は、たばこ「ピース・ライト・ボックス」のTV-CM 曲として使われた。

LONER NOTES

ハモンドB3に熱い思いをのせて

音楽評論家 中川ヨウ/Yo Nakagawa

 オルガン奏者、河合代介のことを誰よりも先に話してくれたのは、BODY&SOULのオーナー、関京子さんだった。現在の活躍を見越したような先見の明があり、京子オーナーはこんな風に熱弁をふるった。「全身全霊なの。演奏もそうだけど、ハモンドオルガンを夫婦揃って運んできてくれ、地下1階にある店に降ろして組み立てる。その姿を見ていると、なんとも言えず嬉しい気持ちになるのね」

 その言葉に誘われて聴いた河合のHammond XK-5 organは、実にパッショネイトだった。手と足とハートをフルに使い、メロディ、コード(ハーモニー)、リズム、そしてベースラインまでを一人で生んでいく。ある時は熱く、ある時はロマンチックに、エモーショナルな表現を可能にするそのサウンドは、テクニックに長けた者にしか生めないものだが、同時に人柄から出ていることは疑いようがなかった。河合の演奏は、筆者も好きなオルガンの第一人者、ジミー・スミスのそれを思い出させるものだった。そんなソウルフルな演奏が日本に生まれた演奏家に可能だということが、筆者の興味を強く引いた。

 今回、彼にとって初めてのリーダー・アルバムに当たる本作「The HAMMOND ORGAN “Swing & Funky!"」がBODY&SOULでライヴ・レコーディングされることになり、ご本人にインタヴューする機会を得た。そこで聞いたプロフィールを簡単にまとめると、オルガンを始めたのは10歳の時からで、独学だった。人気TV番組「太陽にほえろ」のテーマ曲を弾く大野克夫のオルガンに惹かれ、そこからロックのリッチー・ブラックモアへと嗜好が変わっていった。

 ジミー・スミスの音楽に出会ったのは、母親が買ってきてくれた"Jimmy & Wes Dinamic Duo"というアルバムだった。名盤だと知る由もなく、初めてジャズを聴いたので、「メチャクチャに弾いているように思えて母親に返した」という。だが、1年後に同じアルバムを聴いたときは「乗り越えるべき難問」というように感じ、そこから河合の学びが始まった。

 話は2000年に飛ぶが、河合はそのジミー・スミスの甥で、日本でもドラマーとして活動していた トミー・キャンベルと国内で知り合い、青山の老舗ジャズクラブ"BODY&SOUL"で共演するようになる。同店は、ブルーノート東京で演奏を終えたミュージシャンが遊びに来る店として知られて いたが、「ジミー・スミスも顔を出すだろうね」とトミーが言っていた2004年の来日公演がキャンセルされ、翌年、ジミーが帰らぬ人となってしまった。

 このように実際の人生では出会うことがなかった2人だが、本作を聴いていただければ 分かるように、河合の深い尊敬を得て、今またジミー・スミスのオルガン/作曲にスポット ライトが当たったと感じている。

 彼に、メンバーの紹介をしてもらった。太田剣さんは、愛知県出身で同郷なんです。トミー・キャンベルとやっていた“オルガン-アイズ・セッション・バンド”のメンバーでもありましたから、共演経験は長いのです。追い込んでいく感じが素晴らしく、また音場まで気にしてくれるサックス奏者です」

 ギターの天野清継は、「予想を超えた的確なサウンドを作ってくれるギタリストです。ポップスを長い間サポートされているので、音楽的視野が広いのだと思います」大槻KALTA英宣のドラムについては、こう語った。「彼とも長くて、20年以上の付き合いになります。彼のドラムはリズムを刻んでいるという以上に、メロディを演奏していると感じることが多々あります。人の音をよく聴いてくれ、その上でつけてくれるので、嬉しいわけです。 彼は電子オルガンを弾けるのですが、そのことが大きく寄与していると思います」

 ここで河合代介自身の言葉を借りて、今作に収録された各曲の解説をしたい。
M1 Ready'n Able「このバンドでBODYで演奏する時はswing beat を大事にしているので、いつもジミー・スミス作曲のこの曲で始めています」(河合談・以下同)
M2 Midnight Mood 「ジョー・ザビヌルがキャノンボール時代に作曲した3拍子の曲です。 エレガントで好きなハーモニーで、10年以上演奏しています」
M3 Frame For The Blues メイナード・ファーガソンの作曲だ。「スロー・スウィングの曲は、ハモンドオルガンにぴったりです。ピアノでは音を出すと徐々に消えていきますが、オルガンは音を持続できますから、スローの曲で大きな魅力を発揮するのです」
M4 Mercy! 1999年に、河合が在籍していた“リミットレス”というグループのために自身で作曲したナンバーだ。「ぼくなりのゴスペル・ソングです。ホーリーな感じのサウンドを目指しました。ここでは太田剣さんはお休みです」
M5 Mercy, Mercy, Mercy ジョー・ザビヌルの有名なヒット曲だ。関京子オーナーからのリクエストがあり、レコーディングの日に演奏された。「この曲は、皆さんはファンキーに演奏することが多いのですが、ぼくはこの曲こそ祈りを込めて、ゴスペルのフレイバーで演奏したいと思いました」
M6 Friday Night At The Cadillac Club 「1980年代後半、リズムスティック”というグループの企画物に、ボブ・バーグ作曲で収録されていました。シャッフル(スウィングビート)で、ハモンドオルガンにうってつけの曲です」
M7 The Good Life ドン・パターソンの演奏で知られる曲で、2000年代によくトミー・キャンベルと演奏していた。河合代介のアレンジである。 「ドラムとのデュオでやると、最小にして最大の効果が出ると思っています。そこで今回も、大槻さんとのデュオで演奏しました」
M8 Root Down 「ジミー・スミス作曲の、ファンキーなオルガン曲です。DJのサンプリングな どにも使われていますから、ジャズ以外でも認知されている曲ですね」

 このアルバムには、河合代介の魅力が余すところなく収められていると思っている。オルガンはレコーディングするのが難しいと言われている楽器の一つだが、今回はエンジニア がオルガンのバンドにいた経験があり、お聴きの通り臨場感あるサウンドが生まれた。また先ほども触れたが、ドラムの大槻がオルガンを弾いていたことがあり、周囲の人々のオルガンへの深い理解がいい共演を生んでいる。

 河合のオルガン愛が、さまざまな出会いを引き寄せ、このアルバムを完成させたのだと思っている。この初リーダー作発表を機会に、彼がますます活躍することを期待している。(2020年3月記)