3rd release

Lady's Blues

Shinpei Ruike Quartet

  1. A Lovely Way To Spend An Evening (11:04)
  2. Speak No Evil (13:04)
  3. Old Fisherman's Daughter (11:00)
  4. Bluestruck (9:18)
  5. Betty (8:24)
  6. Lady's Blues (9:49)
  7. I Fall In Love Too Easily (9:05)

PERSONEL

類家 心平

Shinpei Ruike

Trumpet

 青森県八戸市出身。小学4年生の時に実家にあった父のトランペットをいじるうちに魅力に取りつかれ吹奏楽部に入部。高校生時代にマイルス・デイビスを聴いてトランペッターを志す。その後、海上自衛隊の音楽隊に入隊。6年間の自衛官生活の後に上京し、多くのミュージシャンとセッションするなどジャズをはじめ、ポップ、前衛、クラブなど、幅広く活動。2004年に6人組のジャズ系ジャムバンド「ur b」のメンバーとしてメジャーデビュー。3枚のアルバムを発売した際には、J-JAZZのランキング1位を獲得した。

中嶋 錠二

George Nakajima

Piano

 青森県八戸市出身。高校までクラシックピアノを学び、尚美学園大学ジャズ&ポップスコースに入学。坪口昌恭氏に師事し、ジャズピアノを学ぶ。自己のトリオをはじめ、「RS5pb(類家心平5Piece Band)」「金子健トリオ」「安藤正則カルテット」「Septet Bunga Tropis」などにレギュラーとして参加。その他、尺八や和太鼓などの和楽器との共演などの作品に参加。現在、都内などを中心に全国各地で活動中。2018年にはスロベニア共和国、中華人民共和国での公演に参加。

鉄井 孝司

Koji Tetsui

Bass

 東京都出身。ジャズとクラシック音楽を愛する木版画摺師の父を持ち、幼少の頃から様々な音楽を聴き親しむ。ノーステキサス州立大にてジャズ音楽を専攻。ベースをJohn Adams、Lynn Seatonの両氏に師事。現在はジャズの演奏・編作曲のみならず、シンガーソングライター大石由梨香のアルバム製作指揮や楽曲提供、マリンバ奏者・塚越慎子との紀尾井ホール出演など、活動の場は多岐にわたる。

吉岡 大輔

Daisuke Yoshioka

Drums

 1975年、広島市出身。専修大学在学中より本田竹広(pf)、辛島文雄(pf)、鈴木勲(b)等、日本の様々なジャズ・ジャイアンツとの共演などキャリア20 年に渡り常に日本ジャズシーンの第一線を渡り歩いてきた名ドラマー。著作は教則DVD「ジャズドラム自由自在」(アトスインターショナル)など。2016年11月、待望のFirst Leader Album「the Express」を自己のバンド「吉岡大輔& the Express」でリリース。作曲の評価も高く、またアレンジャーとしても様々なアーティストにアレンジを提供している。切れ味の良い抜群のリズム感と華やかでダイナミックなドラムソロが聴きどころ。

LONER NOTES

はるか彼方に届く音

音楽評論家 中川ヨウ/Yo Nakagawa

 類家心平のトランペットは、はるか彼方にまで届く響きをもっている。物理的な距離だけでなく、聴き手の懐深くに入り込み、その人の物語に時空を超えて入っていけるような、飛距離と浸透力をもっているのだ。

 彼のトランペットは、未来にも、いにしえにも届く。RS5pb (類家心平 5 piece band)でオリジナルを中心に繰り出す近未来的なサウンドは、21世紀の日本のジャズ・トランペット界を代表するものだ。類家の鋭利な響きが欲しくて、彼との共演を希望するミュージシャンが後を絶たない。その先鋭的なサウンドが、類家の本分であることは間違いないが、彼は同時に、2006年に結成した“類家心平クァルテット”で、青山BODY&SOULを中心にジャズ・スタンダードを演奏してきた。“エレクトリック”と“アコースティック”の、2つの顔。まるで彼が尊敬するマイルス・デイヴィスと同様だが、それを同時に並行して行おうとしている点が、マイルスとは異なる。あまり世間には知られていない“アコースティック類家”が、この度BODY&SOULで二夜に渡ってレコーディングを行い、ここにアルバム『レイディーズ・ブルース』が完成した。

 メンバー3人に、類家のトランペットのどこに最も惹かれるか、レコーディング当日に聞いた。すると、口を揃えて、音色だと言った。「彼だと分かる独自の音色をもっている」。「その音色に込められた、強靭さと哀愁」。「惹かれてやまない音なんです」。そうだ、類家は音色でその人だと分かる、数少ないトランペッターの一人なのである。そう言われた類家は、メンバーについて次のように語った。「中嶋錠二とはデュオでも演奏していますが、実にオネストなピアニストです。ベースの鉄井孝司は、リズムももちろん好きですが、ジャズに関する知識がまた素晴らしい。吉岡大輔はスウィング、4ビートからファンクまで、リアルなグルーヴを生めるドラマーなんです」

 ブルージーな曲が多い本作は、ローランド・カーク作曲の〈レイディーズ・ブルース〉がタイトルになった。「カークの曲にはいい曲がいっぱいあります」と語る類家。この曲は、ニューオーリンズの雰囲気いっぱいに、プランジャーミュートを用いて蠱惑的に演奏される。ジャズの発祥の頃を感じさせる彼の演奏は、初めて聴いたが、その素晴らしさに、彼がジャズを広く探求してきたことを改めて知った。

 それぞれの収録曲について、彼の言葉を借りながら簡単に解説しよう。冒頭の〈ア・ラヴリー・ウェイ・トゥ・スペンド・アン・イヴニング〉では、言葉少なく切々と語る。その行間に広がる想い。男の悲しさと素直な可愛さ。そういったものがサウンドから聴こえてきて、今までに知らなかった彼のもう一つの顔と出逢うようだった。彼が語った。「この曲は、アン・バートンの歌が印象に残っています。バラードですが、アルバムを代表する曲になるかと思い、冒頭にもってきました」。類家は、好きなマイルスが重用した作曲家/サックス奏者、ウェイン・ショーターの曲をよく演奏する。今作では〈スピーク・ノー・イーヴル〉を取り上げた。13分を超える長尺だが、「普段、僕らがライヴハウスでやっていることを、そのままお届けしたかった」と、編集せずに収録した。ダスコ・ゴイコビッチの〈オールド・フィッシャーマンズ・ドーター〉は、前半はベースの鉄井とのデュオで、カップミュートを使ってノスタルジックにストーリーを語る。「マイルス以外では、やはり日野皓正さんがアイドルでした」。その日野作曲〈ブルーストラック〉では、類家の先鋭性が表出した。バンドの演奏も、類家に引っ張られて、鋭く、ハードに繰り広げられる。5曲目の〈ベティ〉は、フランスのトランペッター、Erik Truf fazの作曲だ。私は知らなかったのだが、「フランスのブルーノートからアルバムを出している、エレクトリック中心のトランペッターです。この曲は彼にしては珍しく、ジャズ的なバラードです」と、類家が教えてくれた。ベースの鉄井の歌心が、演奏から立ち上ってくる。また、中嶋のピアノも音色の美しさが際立ち、ドラムの吉岡も控えめながら素晴らしく、このクァルテットの実力が如実に表れている演奏になった。ラストの〈アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥ・イージリー〉は、レコーディングの日も最後に演奏され、その哀切なブロウに、会場から拍手が鳴り止まなかった1曲だ。バラード奏者としての類家心平の素晴らしさが出た演奏であり、バンドもそれぞれに的確でリーダーへの愛情に溢れたプレイで応えている。

 素敵なアルバムができた。類家心平のリリカルな側面を、存分にお楽しみいただきたい。(2019年2月記)